
(2008/6/29)
文:谷川ハジメ
「蒸発願望」
紹介作品
『男の隠れ家を持ってみた』
著者:北尾トロ/発行:新潮文庫/2008年 夜の住宅街を歩くのが好きだ。
知らない街の住宅街を歩くのならなおさらだ。
夜の住宅街、家々には灯りがともっている。
そこには私の知らない人が、私の知らない家族と、私の知らない喜びと、私の知らない悲しみを感じながら人生を生きている。
その家のドアを開けて、「ただいま」と言って、その私の知らない家族の、私の知らない生活に入り込みたくなる。
彼らの生活の喜びと悲しみは、私の知っている喜びと悲しみではないかもしれない、そこには私の知らない何かがあるかもしれない。
私が知らなかった人達に混じって別人となって暮らす事は大きな快感に違いない。
北尾トロは東京のある街に風呂なしのアパートを借りて住むことになる。
西武線沿線の家に妻と娘を残して。
知らない街にただ一人、そして別人となって暮らす、北尾トロの蒸発生活が本作品である。
私の憧れる蒸発生活、その結末や・・・いかに。

■谷川ハジメ
紹介:東京都三鷹市在住。アキ・カウリスマキと椎名誠をこよなく愛する20代後半。現在は活動停止中だが某無名自主映画制作団体を主宰している。
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